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大人になってから気づくトイストーリーの魅力(映画ブログ第四回『トイストーリー』批評と『トイストーリー3』のすすめ)

 こんばんは,ミヤです.映画ブログも二周目に入りました.先週日曜日更新のはずが1週間も遅れてしまいました.すいません.


 さっそく書いていく前に,前回のブログを読んでくれたみなさん,ありがとうございました!案外いろいろな友達が読んでくれていて,とても嬉しかったです.

 今回僕が選ぶ映画は『トイストーリー』と『トイストーリー3』!!なぜなら大好きな作品だからです.他の誰かに大好きな作品を先に取られたくないので,僕は思い入れのある作品からできるだけ書いていきたいと思っています.

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 今回のブログでは,トイストーリーシリーズ最初の作品『トイストーリー』から,トイストーリーという物語の設定が持つ魅力を考えてみようと思います.そしてそれを通じて,今のところの最新作『トイストーリー3』がいかに面白い作品か,ということを伝えたいと思います.『トイストーリー3』に関しては,ネタバレ無しで最後に触りだけ書きます.『トイストーリー』に関しては,観た人も多いと思うので,完全にネタバレします.

 

 では『トイストーリー』の概要を確認しましょう.

 まずこの作品は,何と言ってもフルCGアニメーション作品を初めて長編映画として劇場公開した,ということが偉大な作品です(Wikipediaにも書いていますし字多丸さんも『トイストーリー3』評の冒頭で熱く語っています)。この点は作品内容に入っていく前に書いておかなければいけないでしょう。

 では次にあらすじを確認しましょう.このお話は,アンディという子どもの持っているおもちゃたちが主人公です.彼らには心があります.そしてそのことをアンディは知りません.アンディの昔からのお気に入りのおもちゃウッディと,誕生日のお祝いでプレゼントされて新しくお気に入りになったバズが,おもちゃを破壊することが趣味のシドという子どもに捕まってしまい,そこからアンディの元へ帰ってくる,というのが大まかなお話です.

 

 この作品,小学校の頃毎日一緒に下校していた友達の家で何度も何度も観たのを今でも覚えています(日本での劇場公開が1996年なので,おそらく1997年頃として僕が8歳の時とかになるのでしょうか).

 そのころは,キャラクターたちのハイテンションなやりとりや,おもちゃを破壊しまくっているシドを懲らしめるためのアイデア,シドの家から脱出する際のやっぱりハイテンションで大袈裟なリアクション,そんな部分が大好きでした.

 でも大人になって『トイストーリー3』(2010)を観たとき,そして3を観たことをきっかけにして『トイストーリー』を観直したとき,全然違う部分で面白いというか感動を覚えました。それを書いてみたいと思います.そしてそのポイントが,このシリーズが大人の鑑賞にも耐えられる,というか普通に面白い感じる(なんなら人間ドラマとして結構深い部分を突いた作品たらしめている)要因なんだと思うわけです.

 あまりひっぱってもハードルが上がるだけなので,先に言ってしまうと,その魅力とは“友情”です.そんなの作品の主題歌(「君はともだち」)にもなっているし,改めて言うことでもないだろ!と思われるかもしれません.そう思う人には,この先もしかしたら退屈な文章になってしまうかもしれません.

 でも小学生の頃の僕も,この『トイストーリー』で,最初は仲良くなかったウッディとバズが仲良くなっていって相棒になっていく,そんな物語を観て,信頼できる友人って素晴らしいんだ!くらいは感想として持っていました.

 しかし大人になって観直して,とてもハッとさせられたのは,“友情”をテーマにしながらこの作品で描かれているのは,基本的に「対等ではない関係」なんです。これにびっくりしたんです.

 

 トイストーリーで描かれるのは,おもちゃ達と持ち主の“友情”,そしておもちゃ同士の“友情”です.そしてよく考えれば当たり前なんですけど,ここに対等な関係は存在してないんです。おもちゃ達と持ち主(アンディ)の関係を考えると,おもちゃは持ち主を基本的に選べないのに対して,持ち主はおもちゃを選べます。だからおもちゃ達は常に「捨てられること」を不安に思っています.おもちゃ同士の関係を考えてみても,持ち主(アンディ)に特別に気に入られているおもちゃとそうでないおもちゃ,といったように序列があります.しかもそれは,おもちゃたちの意思とは全く関係なく決められてしまう序列です.こういった設定のなかで“友情”を描く,ということがこの作品の最大の魅力だと少なくとも大人になった僕は感じています.

 

 『トイストーリー』のストーリーに沿って確認していきましょう.まずウッディから見ていくと,彼はアンディの一番のお気に入りのおもちゃでした.しかしアンディが誕生日プレゼントで貰ったバズに夢中になってしまうことで,彼はバズに嫉妬します.ウッディ側から見ると,このお話は嫉妬心を乗り越えるお話なわけです.

 次にバズです.彼は自分がおもちゃであるということを自覚していません.自分のことを本物のスペースレンジャー(ザーグが企む宇宙征服の野望を食い止めるために選ばれた正義の宇宙防衛隊,だそうです)だと思っているのです.しかし彼はシドの家で偶然CMを目撃してしまい,自分が持ち主すら選べない交換可能で汎用なおもちゃという存在であることを知ってしまいます.バズ側から見ると,このお話は「自分がおもちゃであること」ことを受け入れるお話なわけです.

 

 たしかにバズの方は,少し乱暴に描かれてしまっている感は否めません.直接的には足の裏の“Andy”というサインを見て,持ち主からの愛を感じることで「自分がおもちゃであること」を受け入れます.相手の愛を感じて,自分という存在を受け入れる,そんなやや平板な話になってしまっています(こんな評も頷けます).でもウッディの方は,(個人的にですが)ほぼ完璧だと思います.

 『トイストーリー』のラストでウッディは,シドの元から脱出して自分でアンディの元へ帰ります.アンディの元へ帰っても,一番のお気に入りのポジションはバズに取られてしまうかもしれません.また,バズへの嫉妬心から起こした行動で,他のおもちゃ達からの信頼も失っています.それでも,ウッディは自分でアンディの元へ帰ります.ここが重要です。つまり,それまで持ち主を選べないおもちゃと遊ぶおもちゃを選べる持ち主,という関係だったのが,ラストシーンではおもちゃが自分で自分の持ち主を選んだわけです.

 だから,最後のシーンでまた新たにアンディにおもちゃがプレゼントされようとしている時のウッディには余裕があります。だって自分で選んだ相手と遊べているわけですから.また,自分で選んだ仲間が周りにいるんですから.もしいつかアンディに飽きられてしまっても,仲間がいます.しかも自分で選んだ持ち主なのだから,捨てられてしまってもそれはそれで仕方ないと思えます.清々しいですよね。そしてこんな気持ち,8歳の僕には理解できないものでしたが、大人になった僕には,とても共感(というか,“羨ましい”が正しいかもしれません笑)できるものでした.20年も生きていれば、友人を選んだり、恋人を選んだり、その相手にも自分を選んでもらえたり、選んでもらえなかったり、、そんな気持ちを伝えられたり伝えられなかったり、、いろいろありますよね笑 はい、僕はあります。なのでウッディに感情移入してしまうんです。ウッディのアンディへの気持ちが報われますように!そんな気持ちになるわけです。

 あからさまに対等ではない“おもちゃと人間”という関係性だからこそ,現実の人間関係における相手を選んだり相手に選ばれたりといった部分の象徴として、観る方はより読み込んでしまうわけです。

 これがトイストーリーという物語の設定自体が持つ魅力なんだと思います。では最後に『トイストーリー3』の話を少しだけしたいと思います.

 『トイストーリー3』の魅力は何と言っても、アンディが大学生入学を控えているほどに成長してしまっている、という点にあります。時間の経過を使うことで、時間とともに成長する人間と時間が経っても成長することはないおもちゃ、という再び対等ではない関係になってしまうのです。だからやっぱり、おもちゃ達は「捨てられるかもしれない」とまた不安になります。さあ大人になったアンディはおもちゃ達のことをどう思っているのでしょうか??

 そしてそして3の魅力として絶対に欠かすことができないのは、悪役のおもちゃ(名前は伏せておきます)です.このおもちゃは,絶対に人間や他のおもちゃと信頼関係を築こうとしません.それは過去に持ち主とピクニックに行った先で忘れて帰られてしまい,長い道のりを持ち主の家まで帰った(こいつもちゃんと1のウッディと同じように、物理的に離れても同じ持ち主を選んだわけです)ときには,時既に遅く,持ち主はもう新しい同じおもちゃを持っていてそれと仲良く遊んでいるところを目撃してしまう(持ち主の方は選んでくれなかったわけです)という経験をしたからなのです。その経験を経て,おもちゃに特定の持ち主がいない方が,捨てられる悲しみも不安も感じずに済むから良いんだ,というように考えるようになったのです.大切な関係ほど代わりのものが必要という,非常に繊細な部分も描かれていますし,これまでに述べたような設定がしっかりと活かされて生まれた悪役だと思います.

 こういったキャラクター達が、最終的にどんな仲間を選び,どんな持ち主を選ぶか,そんな目線で観てみてください.もしくは観返してみてください.すべてしっかりと描かれています.

 月並みな表現でしたが、トイストーリー3』まだ観ていない人、特に1は観たけど3は観ていないという人がこのブログを読んで「3を観てみたい!」と思ってくれたら嬉しいです。前回ブログで長いとの指摘をたくさん受けたのですが、また長くなってしまいました。読んで頂いてありがとうございました!