KSC CINEMA

男は黙ってモヒカン!

バットマンの覚悟と苦悩

映画ブログ第8回!

今回は自分の最も好きなアメコミ作品について取り上げたいと思います!担当はケンです!

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ブルース・ウェイン

この名前を知ってる人は多くはないかも知れません。
しかしバットマンと聞けば映画やコミック、アニメを見たことがなくても知っているでしょう。

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今回はインターステラーインセプションで有名なクリストファー・ノーラン監督によるバットマンシリーズについて扱い、ブルース・ウェインの覚悟と苦悩について書こうと思います。(バットマンビギンズとダークナイトのネタバレあり)

 

バットマンビギンズ

~なぜブルース・ウェインバットマンになったのか~

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夜はコウモリの格好をしゴッサムシティで悪と闘うヒーロー
昼はゴッサムシティの大財閥ウェインカンパニーの社長、高級車を乗り回し美女を連れてるプレイボーイ

それがブルース・ウェインです。

どうして彼はこのような2つの顔を持つようになったのでしょうか

ノーラン監督は映画版で初めてブルース・ウェインがなぜバットマンになりゴッサムシティで悪と闘うのを描きました。

それが第一作目『バットマンビギンズ』です。

舞台は悪がはびこるゴッサムシティ。犯罪が日常的に起こり、警察も賄賂で動き、ゴッサムシティを正しい方向に導くことのできる人間はいませんでした。

ブルース・ウェインは幼い頃、強盗に両親を目の前で殺されてしまいます。
青年になったブルースは両親を殺害した犯人の裁判に出席。裁判では犯人が司法取引により組織の犯罪を暴露し、減刑を求めていました。ブルースはこれを許せず犯人に復讐しようと試みますが直前に組織の人間に殺されてしまいます。
裁判で検事として参加していた幼なじみで、互いに惹かれあっている女性である、レイチェルに自分のしようとしたことを打ち明けますが、自分がいかにこのゴッサムシティの裏側に無知であったかを思い知らされてしまいます。
復讐に囚われ、愛する人からも愛想をつかされたブルースは単身で組織のボスに会いに行きますが全く相手にされません。
ブルースはゴッサムシティの悪の根の深さを知り、悪に対抗する力をつけるべくゴッサムシティから姿を消し、悪に対する恐怖と闘う旅にでます。

彼はたびたび小さい頃にコウモリに襲われた記憶を思い出します。
この悪と戦うための修行の中で、自分の内面にある恐怖に打ち勝つ術を学び、
彼自身の恐怖の根元であるコウモリを身にまとい悪に対する恐怖のシンボルとしました。

こうして彼はゴッサムシティに戻り悪と戦うためにバットマンになったのです。

 

バットマンになって失った自分

ブルースには幼馴染みのレイチェル・ドーズという女の子がいました

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(左がダークナイト版レイチェル、右がバットマンビギンズ版レイチェル)


ブルースとレイチェルは惹かれ合っていましたが、ブルースは悪の根を絶やすためにゴッサムシティから消えてしまいます。
彼女はその間、検事として法を武器に悪と戦っていました。
戻ってきたブルースは昼はプレイボーイ、夜はバットマンと全くの別人になっていました。
彼女の前でのブルース・ウェインはウェインカンパニーのお金を使い女を連れて遊び回っている人間でした。
ブルースの昼の姿を見て完全に愛想を尽かしたレイチェルに本当の自分は違うと弁解しますが「人間は中身ではなく行動で決まるのよ」とブルースから離れてしまいます。

ゴッサムシティで起こる奇妙な事件を追っていたレイチェルは悪党の手にかかり窮地に立たされます。間一髪でバットマンに助けられバットマンの正体を尋ねます。
バットマンは「人の本性は行動で決まる」と言い、立ち去ります。


レイチェルはその時はじめてブルースの真の姿を知るのです。
正体を明かしたブルースはレイチェルに交際を申し込みますが、レイチェルは断ってしまいます。
彼女にとってブルースは昔の愛していたブルースではありませんでした。
ブルース自身は昔のままの自分を持っていたつもりでした。しかし、レイチェルにバットマンこそが現在のブルースの本当の姿で今目の前にいるブルースこそが仮面なのだと、そして昔のブルースはどこかに行ってしまったと言われてしまうのです。

昔のブルースはバットマンをやめたときに戻ってくるのだと。

バットマンになって失ったものに悩みながらも、ブルースはバットマンをやめることができません。
この苦悩を抱えたまま第二作の『ダークナイトに続いていきます。

 

ダークナイト

バットマンは選択を迫られる~

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ゴッサムシティには新たな悪党が現れました。
バットマンシリーズ最狂最悪の敵、ジョーカーです。(画像左)

また同時に新たなヒーローも登場します。

様々な事件を解決し、ゴッサムシティの悪の根を絶とうと努力し続けているレイチェルの同僚であり、恋人でもある検事のハービー・デントです。(画像右)

ハービーはゴッサムシティの希望、正体を隠さず真正面から悪と闘う真のヒーローです。
レイチェルはそのような彼の一面性に惹かれ彼と付き合いました。

愛する人をとられた形となったブルースはハービーの登場をむしろ歓迎しました。
ブルースがバットマンとして守ってきたゴッサムシティはハービーに託すことができると。そしてゴッサムシティの市民もそれを望んでいるのだと考えたのです。
その考えの先には苦悩からの解放がありました。ハービーに任せてバットマンをやめれば昔の自分とレイチェルを取り戻すことができるはずだと。

しかし、そんな考えはジョーカーによって書き消されます。

ゴッサムシティに忽然と姿を現したジョーカーは金や力などの欲に対する執着がありません。
彼は自分が楽しむためだけに人を操り、弄び、殺します。
彼の価値観に勝ちや負けは存在しません、自分が快感を得られるかどうかだけが彼の判断基準となります。

そしてジョーカーの遊び相手として"バットマン"が選ばれたというわけです。

ジョーカーはゴッサムシティのマフィア組織を簡単に掌握し、バットマンに様々な選択を迫り、それに困窮するバットマンを見て快感を得ます。

ジョーカーはゴッサムシティを混沌に陥れました。
バットマンが正体を明かさなければ1日に一人市民を殺すとゴッサムシティ中に伝え、市民に恐怖とバットマンに対する負の感情を植えつけます。

ブルースは市民を守るためにハービーやバットマンビギンズからバットマンに協力している市警の警部補であるゴードンに頼みの記者会見を開きますが、記者会見の中でハービーが自らがバットマンだと申し出てしまいます。

ブルースは続けざまに迫られる選択に即座に答えることができません。

ジョーカーの標的となったハービーは警察によって護送されますがハービーを守りジョーカーの遊びを邪魔しようとする者は次々に殺されていきます。

ブルースはバットマンとして姿を現し、ハービーを助けに来ますが、ジョーカーを殺せる状況で、ジョーカーを殺す選択をすることができません。
結果としてジョーカーは警察に捕まりますが、この選択が後に大きな代償をもたらします。

ジョーカーは尋問の中でも、バットマンに選択を迫ります。
バットマンの愛するレイチェルと家に護送したと思っていたハービーがジョーカーの手下(汚職警官)によって誘拐されていました。二人は別の場所に囚われ、その場所には時限爆弾がセットされています。
警察署から向かうとギリギリになる時間でジョーカーはバットマンに住所を教えました。
バットマンはレイチェルを助けに行き、ゴードン警部補はハービーを助けにいきますが、バットマンが到着した時にいたのはハービーでした。
ジョーカーはバットマンにわざと違う住所を教えたのです。

レイチェルは間に合わず爆発により亡くなりました。ハービーはバットマンに助けられたもののガソリンが引火し半身に大火傷をおいました。

2つの顔のハービーデント

ハービーデントはレイチェルが死んだことで、壊れてしまいました。
ジョーカーのみならずレイチェルを助けることができなかったバットマンやゴードン刑事を恨みました。

ハービーは今まで何かの選択を迫られた時にコイントスで決めてきました。
そのコインは実はどちらも表ですが、悪用はせず、相手を納得させたり尋問にかける時に使用していました。
しかし火傷をおった時にそのコインの半面が焼け、表と裏ができてしまいました。
今まで自分の顔を出して正々堂々と戦ってきたハービーの一面性がレイチェルの死とジョーカーの策略により崩れ、奇しくもブルースと同じく2つの顔を持った怪人"トゥーフェイス"に変わってしまいました。

トゥーフェイスコイントスの結果をもとに次々とレイチェルの死に関わった人間を裁き、殺していきます。

一方、バットマンはレイチェルの死により手段を選ばすにジョーカーを追いかけます。
最後にジョーカーが仕掛けた選択は市民自身により事なきを得、ついにジョーカーはバットマンに捕まりますが、ジョーカー最大の狙いはハービー・デントの堕落でした。


ハービー・デントの堕落は、ハービーの悪の根を正面から絶とうとする姿に希望の光を感じていたゴッサムシティの市民に致命的なダメージを与えかねません。

トゥーフェイスになる前のハービーはゴッサムシティを浄化するために”汚職警官の摘発”を提案していました。しかしその提案はゴードン警部補に濁されてしまいマフィアの摘発を優先されてしまいます。結果として、汚職警官を摘発しなかったことにより、ハービーとレイチェルは誘拐され、レイチェルの死という最悪の結果を引き起こしました。
その報復としてハービーはゴードンとその家族を誘拐します。

愛するものを失う苦しみをゴードンに味わせるために家族をコイントスにより裁こうとしますが、バットマンがなんとか間に合います。

バットマンはゴードンの息子を助けるためにハービーを突き落とし、ハービーは死んでしまいます。作中で初めてバットマンが人を殺してしまったシーンです。

バットマンビギンズ』のころから苦悩していたブルースのバットマンとしての覚悟が最後に試されたのです。

そしてバットマンゴッサムシティの希望を絶やさないためにハービーが犯した罪をすべて背負い闇に消えてきます。


唯一顔を持たない者、ジョーカー

ブルースウェインもハービーデントも二つの顔を持っていました。しかし、これは人間なら誰でも持っているはずです。特に日本は”本音と建前”の社会と言われるように二つの顔を使い分けることで生きています。

そしてジョーカーは作中で唯一顔を持たない者です。つまり、人間ではありません。
ジョーカーは地震津波などの天災のようなもので、考える猶予も許さず人間に選択を迫ってきます。一つでも選択を誤れば死が待っているのです。

ブルースやハービー、ゴッサムシティの住人は天災を前に選択を迫られていたのです。
圧倒的な天災を前に、ハービーの正義の心は折れ、ブルースはバットマンビギンズから持ち越した苦悩との決着をレイチェルの死という形で一方的につけられてしまいます。

そしてすべてを背負ったブルースは最終章である『ダークナイトライジング』でこの問題とどのように向き合うのでしょうか。底辺まで落ちきったブルース・ウェインは再び這い上がることができるのでしょうか。

気になる人は是非『ダークナイトライジング』を見て確かめてもらいたいと思います。
それではこのへんで!

ケン@90matsu 2015.3.2